早産・死産撲滅に、シアトル子ども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出す

まず、去年の記事から。

Taking steps to ease economic burden of early birth
The Puget Sound Business Journal (Seattle), July 25, 2008


米国の新生児の8人に1人が未熟児で生まれ、そのうち毎年1万人が死亡。
そのため、早産が米国の乳児死亡率を上げる主因となっている。

ワシントン州でも毎年8000人、新生児の1割以上が早産で生まれており、
1994年以降、その割合は23%も増加している。

2007年のInstitute of Medicineの報告書によると
米国の未熟児にかかる社会経済的負担は1人当たり51600ドル。
ワシントン州全体では4億ドル以上がかかっている計算になる。

そのほかにも、早産の女性は出産時の入院期間が長くなるし、
出産後にも両親が病院で過ごす時間が長い、
その後も子どもの病院通いの頻度が高い、
母親が産後の休暇を長く取るなど、
社会経済に与える影響も大きい。

しかし現在の医療戦略には早産の抑止や予防が含まれていない。

そこでシアトル子ども病院が
早産・死産の原因を突き止め、予防するべく
2007年にスタートさせたプロジェクトが
The Global Alliance for the Prevention of Prematurity and Stillbirth(GAPPS)。

GAPPSは UNICEFF、First Candle, Save the Children, CDC, WHOなど
世界の関連機関と協働しつつ

またthe Washington Global Health Alliance(WGHA)を通じて
州内の研究資源を動員し、早産・死産の原因解明に努める。

そして世界の早産・死産研究の中枢として
2009年には国際会議をシアトルで開催する。

で、
ここに書かれている国際会議が5月7-10日にシアトルで開催される、という4月の記事がこちらで、
UNICEFから出されたプレスリリースを元にしたもの。



ただし出席は招待者のみ。

GAPPSは4月24日、
以下の組織と協働して早産・死産の原因究明と効果的介入に向け努力することを公にした。

ゲイツ財団、
March of Dimes、
PATH、
Save the Children,
UNICEF, WHO

GAPPAは現在、ゲイツ財団の資金によって、早産・死産に関する研究を徹底調査をおこなっており、
その研究成果は5月7-10日の国際会議後に発表される、とのこと。

Lancetの周産期救命シリーズからの統計では
生まれて28日以内に死亡する新生児の死因の第一位は早産で、

2005年の Institute of Medicineの試算では
米国の医療費の中で早産関連のコストは260億ドルを超える。

また未熟児は救命できても、脳性まひ、脳損傷、呼吸障害、発達障害が起こりがちである。
(はっきり書いてないけど、もしかして言いたいのは「死ぬよりもゼニがかかる」?)

そこでGAPPSのexecutive director Craig Rubens 医師は
「早産・死産によるご家族の大きな苦悩を放っておくことはできない。

 早産・死産撲滅に向け、
科学、公衆衛生、研究、施策の各分野の第一人者が集まったことを
GAPPSとしては誇りに思う。

シアトル子ども病院は
多くの患者が早産に関係した障害に苦しんでいることに気づき
この問題を我々の研究の最優先課題と位置づけた」。


ちなみに、こちらのSeattle Timesの記事によると
2007年に GAPPS が立ち上げられた際にゲイツ財団から150万ドルが出ています。


       ―――――――

今回の記事のタイトルは
グローバル・ヘルスのリーダーたち、早産と死産の危機に取り組む」と謳っており、

すなわち、シアトル子ども病院とゲイツ財団とは
“グローバル・ヘルスのリーダー”であり、パートナーでもあるわけですね。

「ご家族の苦悩」に触れられているのは、わずか一回だけですが
2つの記事では、ともに医療費へのburden(負担)という言葉は何度も繰り返されており、

ここに見られるのは、
ワシントン大学のIHME がゲイツ財団、Lancetと協働で進めている
DALYによる世界の保健医療施策の見直し Global Burden of Disease プロジェクトと
まったく同じ考え方。

命を奪う病気や状態だけでなく、
命が助かっても障害に結びつく病気や状態は
医療費コストに負担を強いているので撲滅しなければならん……と。