FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー

違法な自殺幇助が問題となっているThe Final Exit Networkの創設者で
今回Georgia州の男性のヘリウムによる自殺幇助容疑で逮捕され保釈中のTed Goodwinが
17日にAP通信のインタビューを受けています。

Goodwinは逮捕されるまでFENの会長でした。
余命が数ヶ月に限られていなくても自殺幇助は受けられるべきだと
インタビューでも持論を展開しています。

「病気で終末期を迎えている人は、ある意味で恵まれています。
苦しみの時間が限定されていますから。
しかし、何年も無期限に苦しみ続けるしかない人たちもたくさんいる。
そういう人たちだって支援を受けられていいはずだ」

Georgiaの事件でGoodwinらの幇助を受けて自殺したJohn Celmer氏は
がん患者でしたが、回復しつつあってターミナルではありませんでした。

2007年にArizonaでFENが自殺に関与したとされる女性 Jona Van Voorhisさん
うつ状態であり、ターミナルな病気だったわけではありません。

また、ここしばらくメディアが報じているのが
Chicago郊外に住む Kurt Perryさん(26)のケース。

神経障害の痛みがあるのと、呼吸が時々止まってしまう不安とに苦しんで
FENの会員となって実際に自殺すると決意を固めたところ、
2月26日に予定されていた自殺の前日になって
幹部が逮捕されてしまったためPerryさんの自殺幇助は棚上げになりました。
この人も痛みはありますが、ターミナルな状態ではありません。

しかしFENから逮捕者が出たことで、Perryさんは
FENを支持することに生きる目的を見つけ、死ぬのをやめたのだとか。

Goodwinは医師ではなく、
父親が肺気腫で亡くなったのを機に2004年にFENを創設。
FENはこれまでに200人近い人の自殺にガイドとして手を貸してきたが
実際に自殺行為を手伝ったことはない。
Goodwin自身も39人の死に関与した、と。

FBIのおとり捜査官が自殺希望者を装った際に
頭からかぶった袋を本能的に脱いでしまわないようにFENのガイドが手を押さえた
という話が出てきていることについて

「手を押さえたりしません。苦しみにつながることはしません。
法廷で証明されるでしょう。約束しますよ」

FENによると会員と寄付を寄せる人で3300人。
ボランティアが100人。

Goodwinによると、
2007年にVan Voorhisさんの死が問題になって以降は
自殺希望者から精神病歴を全部聞き出すことにしたし、

毎年希望者の3割程度が、
失業や配偶者の死その他の苦しみから死にたいと希望する精神病患者で、
彼らの希望は即座に断ることにしている。

時に希望者の精神病歴に懸念が残ることがあり、そういう時は
FENと提携している10人の精神科医・心理学者の一人が
その人を訪ねてアセスメントを行う。

FENの活動はいつか罪に問われると考えつつも
精神病歴がない場合には希望者の自殺を支援してきたのは

「自分が苦しんでいるかどうかを決めるのは
自分で意思決定できる知的能力のある成人すべての権利だと
我々が確信しているから。
この問題は医師や教会の指導者や政治家に決めさせるようなことじゃない。
これは自分で意思決定できる成人のすべてが持っている自己決定権なのです」

AP Interview: Leader of suicide ring defend work
By Greg Bluestein and Lindsey Tanner,
AP, March 18, 2009


FEN幹部の逮捕がなかったら、
26日に彼らのガイドを受けてヘリウムで自殺していたはずのPerryさんが
FENの危機に「自分も一肌脱がねば」と生きる目的を見出して
自殺する気持ちを翻したというのは
なんとも皮肉な、しかし、また、実に象徴的な展開。

Perryさんが死にたいと望む理由とし、FENも幇助の合理的な理由だとしていた彼の病状は
幹部逮捕の前後で変わったわけではないのだから、

人は病気で痛みがあったり苦しんでいる、というだけで死にたいわけではない、
病気で苦しむことによって生きる希望が持てなくなるから死にたいのであり、
生きる目的や希望が見つけられれば
痛みや苦しみがあっても生きようとする可能性があるのだということを
Perryさんの翻意こそが物語っているのでは?

1つの偶然が起こらなかったら、
2月26日に自殺していた人が
1つの偶然のおかげで、
今は死ぬのをやめて生きるといっている──。

支援という言葉は、やはり
「死ぬ」と言っている人が「生きる」と言える可能性を
共に見つけようと寄り添う方向に使われてほしい。

【4月10日追記】
Perryさんのインタビュー記事。
http://cbs2chicago.com:80/topstories/Final.Exit.Kurt.2.981473.html