ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチン

昨日のエントリー
子どものワクチン接種率を上げるための
開発途上国へのインセンティブ支払いにおける不正に関する調査結果について紹介し、
当ブログが兼ねて注目してきたワシントン大学のIHMEは
ゲイツ財団の保健医療関連資金の取り締まり機関なのかと
疑問を呈したところですが、

今日はNY Timesが社説で
大手製薬会社 Glaxoがゲイツ財団の資金援助で
長く実現が困難視されてきたマラリア・ワクチンの開発に近づいていることを伝えています。

The New England Journal of Medicineに発表された研究によると、
現在有望視されているワクチンは乳幼児の病気を半分に減らしただけでなく
アフリカで既にルーティーンで行われている子ども向けワクチンと
一緒に使っても安全だったとの結果が出ており、

同誌のエディトリアルもこのワクチンの効き目を
マラリア予防の「有望な始まり」だと。

とはいえ、この研究が行われたのは比較的マラリアの少ない地域であり、
マラリアが頻繁な地域での効果に付いては未知数。
来年さらに広く実験が行われなければ何ともいえないのだけれど、

たとえ効き目が完全でなくとも多くの命を救うことになるだろうし、
現在の殺虫剤を塗った蚊帳とマラリア薬の効果を補強することは可能だろう、と。


Glaxo社はもともと軍の職員や旅行者向けのワクチン開発に資金投入しており、
子ども向けのワクチンには財政リスクの点で乗り気ではなかったのだけれど、
そこにゲイツ財団が資金援助を申し出たことから同社も投資することになったという経緯についても触れ、
社説は次のように書いています。

このワクチン候補の開発がここまできたことそのものが
慈善貢献が企業利益を生み出し維持する力への大きな賛辞である。

認可申請は2011年に予定されているとのこと。

The Glaxo-Gates Malaria Vaccine
The NY Times, December 13, 2008


Glaxoといえば、抗うつ薬Paxilを巡って一大スキャンダルがあった会社。

社内の臨床実験段階で擬似薬の8倍もの自殺企図が起こっていたにもかかわらず
データを隠蔽・改ざんしてFDAの認可を受け、
十分な副作用への警告なしに販売したことから
多くの自殺者、未遂者を出し、現在裁判が行われています。

ちらっと頭をよぎったのですが、
アフリカで臨床実験して子どもたちに副作用被害が出ても
米国の被害者のように裁判なんか起こせないだろうな……。