英国児童福祉史の汚点 ”Baby P事件”

もう、ずいぶん前から英国メディアが毎日のように報道しているのが
虐待を行政が把握していながら救えなかったBaby P 事件。

当時1歳半のBaby Pが亡くなったのは去年8月なのですが、
母親とその恋人、下宿人の3人からの虐待は
Baby P に「サンドバッグにされた赤ちゃん」という別名を与えたほど凄まじく、
亡くなった時には全身のあちこちに骨折があったとのこと。

しかも、その後の調査で、
亡くなる1年以上も前から病院への受診もあり、母親が逮捕されてもいて
医療関係者、地方自治体の児童福祉関係者は虐待の事実を知っていたにもかかわらず
保護手続きをとらずに母親の手元に戻していたなど
関係者の不手際、怠慢が次々に明るみに出ています。

最近では、医療・福祉関係者の本人との接触は60回にも及んでいた事実が判明。
救うチャンスがそれだけあったのに、なぜ救えなかったのか、と非難の声が大きくなり、
どうやら、この事件、英国児童福祉史の汚点となりそうな気配です。

昨日、いよいよ最終報告書が発表され、
地方自治体の児童保護業務の機能不全ぶりが指弾されています。

ここ数日のうちに
Baby Pを診察しながら数箇所に及ぶ骨折を調べようともせずに帰したとして
医師が業務停止処分を受けたり、
自治体の関係幹部らが辞任したり停職処分を受けたりと
処分が相次いでいるところ。

またこの事件の衝撃的な事実が解明されるにつれ、
全国で児童保護の申請が急増したり、
自治体が積極的な介入を始めたり、
何かあったら責任を問われると我が身を脅かされた各地の行政関係者が
しきりに動き始めているようです。



Three suspended over Baby P case
The BBC, December 1, 2008


Devastating report reveals Baby P failings
The Guardian, December 2, 2008


事件の年表はこちら

Timesのスライドはこちら


【追記:補遺からコピペ】

2009年5月13日
Baby P 事件の調査報告書がケアの質コミッションから出ている。関与した医療・福祉の専門家の誰か1人でも「ここまでやったら義務は果たしたぞ」というラインをちょっと超えていれば、Baby P は今生きていたかも知れぬ、と。(米国のIDEAをちょろっと読んだ時に感じたことがある。結局すべてが「やるべきことはやりましたよ」とアリバイ作りの書類仕事・手続き整備に過ぎないのじゃないか……と)
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/child_health/article6276087.ece?&EMC-Bltn=OIZFNA

5月23日
英国のBaby P事件で、母親と恋人、家主が収監された。恋人はPeter君の死と2歳の女児レイプの罪で12年の懲役。母親と家主については、社会への危険とみなされなくなるまでということで今のところ未定期。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/london/8055340.stm

8月11日
国史上最悪の児童虐待 Baby Peter事件で、殺人罪に問われた母親と恋人、同居していた恋人の弟の名前が公表された。:何で今頃わざわざ? と思わないでもないけど、改めてこの長い記事で事件の概要を読むと、この恋人の男性の嗜虐性と狡猾さは普通じゃない。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/crime/article6790819.ece?&EMC-Bltn=OLSD7B