チンパンジーに法的権利認める(スペイン)

法的強制力を持つものではありませんが、
サルに動物園での飼育は認めるものの
サーカスやその他の芸をやらせてはならないという決議が
スペインの議会で行われた、とのこと。

世界各地でチンパンジーを始めとする大型類人猿に法的権利を認めようとの
動きが起こっており、

オーストリアでは去年、
動物愛護団体チンパンジーをMatthew Hiasl Panと名づけ、
法的権理が認められる人格(person)であることの認定を求めて
裁判所に法的代理人申請を行った。

飼育施設が経営難に陥ったことから
チンパンジーに財産権が認められれば
寄付を受けることが可能となりホームレスとなることを防げる、との狙い。

オーストリアの裁判所が却下したため、
活動家らは欧州人権法廷に訴え出て闘争を続行する予定。



この社説によると、
チンパンジーは人権が認められるべき人格であるとする活動家らの根拠は
チンパンジーのDNAの98%は人間と同じで、
類人猿は複雑なコミュニケーション技術をもち細やかな情で繋がっている、
寂しさや悲しさも経験するのだから、
一定の尊重に値する、というもの。

そして、
「不可逆的な植物状態に陥った人に権利があり、
法人格にすら言論の自由と平等な保護、訴えたり訴えられる権利が認められているのだから
チンパンジーを人格と呼ぶことはそれほどぶっ飛んだことでもあるまい」

「類人猿に敬意を表することは
同時に人間の格を上げるのではないだろうか」

……というのが、この社説の主張のようですが、

障害のために言葉を失い、意思や感情を訴える術を失っただけかもしれない人には
人格を認めないばかりか「どうせ治らないのだから」といって
餓死させるようなことが行われている一方で、
そんなことを言われても……。

オーストリアのケースに関する記事の一部を以下に。


Court Won’t Declare Chimp a Person
Live Science, September 27, 2007


          ――――――――

一定の知的能力で人格の有無に線引きをする「パーソン論」でもって
重い知的障害のある人に人権を認めず、
その逆に類人猿に人格を認めるのは
トランスヒューマニストらに共通の価値観。

また彼らはsentience という言葉も多用しています。
感覚の有無で生命の種類に線引きを行い、
感覚のある生物をsentience と称しているのですが
分類の詳細についてはそれぞれのTHニストで違っていたりもするようです。

その一例は“Ashley療法”論争に擁護派として登場した世界THニスト協会幹部
James Hughes の著書“Citizen Cyborg”に挙げられている分類。

Hughesの想像(提唱?)では
科学とテクノロジーによってサイボーグと化し、強化・進化した未来の人類社会では
民主的な社会を維持するため生命の種類によって市民権が4段階に分けられます。

① “完全な市民権”を与えられるのは
「理性ある成熟した人格」という意識状態にある大人の人間と
 認知能力がそれに匹敵するもの。

② “障害市民権”が与えられるのは
「人格(自己意識)」がある意識状態が基準で、
人間の子どもと精神障害のある人間の大人、それから大型類人猿。

③ “感覚のある財産”というステイタスになるのは
 胎児、植物状態の人間、ほとんどの動物。
Hughesはこの意識状態をsentience(快と痛を感じる)と呼び、
 苦痛を与えられない権利のみを付与します。

③ その他、権利を持たない“財産”と見なされるのが
胚、脳死の人間、植物、物品。
これらは Not sentient (感覚がない)。


つまり、
子どもと精神障害者は大型類人猿と同じ意識状態の範疇に入れられているわけですが
THニストは障害者を云々する割りに、その現実・実態に全く無知なので、
ここでいう「精神障害者」には「知的障害者」を含めている可能性があります。

しかし、実際に彼が書いていることを読んでいくと、
ASLが植物状態と混同されていたりして、
上記の分類は、作った当人の頭の中ですら全く機能していません。

詳細は以下のエントリーに