妄想
数年前から行きがかりで外資系の保険屋さんとお付き合いがある。
客としてのお付き合いは非常に薄いのだけれど、
なぜか、この保険屋のニイチャンとはなんとなく仲良しで、
経済とかお金の問題に疎い私は、たまに彼がくると掴まえては
いろいろ教えてもらって重宝している。
客としてのお付き合いは非常に薄いのだけれど、
なぜか、この保険屋のニイチャンとはなんとなく仲良しで、
経済とかお金の問題に疎い私は、たまに彼がくると掴まえては
いろいろ教えてもらって重宝している。
先日、サブプライム問題を解説してもらって、
ドルがこの先上がるの下がるのと話をしているうちに、
相手の話をよく理解できないことも手伝って、ふと気が散って、
日ごろから抱いているとても素朴な疑問を口にしてみた。
ドルがこの先上がるの下がるのと話をしているうちに、
相手の話をよく理解できないことも手伝って、ふと気が散って、
日ごろから抱いているとても素朴な疑問を口にしてみた。
ねぇ、それより、ドルの相場とか、そういう次元じゃないところで、
実は世界経済そのものが破綻しそうだなんてこと、ないの──?
実は世界経済そのものが破綻しそうだなんてこと、ないの──?
彼は本当に口をあんぐりさせて仰天した。
しばし絶句した後、
しばし絶句した後、
「え? ……なっ……でも、あのっ……いや……ええぇー?
なっ、なんでまた、そ、そんなこと考えるんですかぁ??」
なっ、なんでまた、そ、そんなこと考えるんですかぁ??」
体をくの字に折り曲げて、あえぐように問われても
たいした論理的な根拠があるわけではないし、
たいした論理的な根拠があるわけではないし、
いやさ、インターネットで日英のニュースを眺めていると、なんだか知らないけど、
温暖化で地球環境がもたなくなるのと、
添加物やら薬やら科学やらテクノロジーが人間の心身を蝕み尽くすのと、
人間の倫理観がおかしくなって社会秩序も崩壊、弱肉強食の殺し合いになるのと、
世界経済が破綻するのと、
順番はどうだか知らないけど、
あちこちでいろんなモノが加速度的に崩壊に向かっているような
危うい感じがしてさっ。
温暖化で地球環境がもたなくなるのと、
添加物やら薬やら科学やらテクノロジーが人間の心身を蝕み尽くすのと、
人間の倫理観がおかしくなって社会秩序も崩壊、弱肉強食の殺し合いになるのと、
世界経済が破綻するのと、
順番はどうだか知らないけど、
あちこちでいろんなモノが加速度的に崩壊に向かっているような
危うい感じがしてさっ。
ほれ、世界人口の1%のスーパーリッチが全世界を支配して、
私らみんな彼らの社会を支える奴隷労働者……みたいな日がくるとか、
そういうことは本当にないって、思う──?
私らみんな彼らの社会を支える奴隷労働者……みたいな日がくるとか、
そういうことは本当にないって、思う──?
「うわーぁ、なんですか、そのものすごい想像は。
いやぁぁぁ。よくそこまで、いろんなことを想像できますねぇぇぇ」
いやぁぁぁ。よくそこまで、いろんなことを想像できますねぇぇぇ」
バカにしたような目つきになりながらも
彼はいい人なので、そんなことは起こらないと保障してくれた。
彼はいい人なので、そんなことは起こらないと保障してくれた。
少なくとも私よりは世の中の経済の仕組みを知っている彼が
そういって保障してくれたのだから、
安心してもいいのだろうとは思うのだけど、
そういって保障してくれたのだから、
安心してもいいのだろうとは思うのだけど、
それからずっと引っかかっている。
外資系保険屋のニイチャンは
本当にそんなことは考えたこともないのか、
それとも本当に世界経済が崩壊するなんてことはありえないのか、
それとも本当は危ういと思っているのだけど客にそれを認めるわけにいかなかったのか、
それとも本当は危ういのだけど商売上近視眼的になってそれが分からないのか、
それとも外資だから本当にアメリカ・ドルだけは大丈夫と信じているのか、
それとも危ういことに気づかないからそんな商売を続けていられるだけなのか、
それとも所詮は無知なオバサンの妄想だから相手にしなかっただけなのか……。
本当にそんなことは考えたこともないのか、
それとも本当に世界経済が崩壊するなんてことはありえないのか、
それとも本当は危ういと思っているのだけど客にそれを認めるわけにいかなかったのか、
それとも本当は危ういのだけど商売上近視眼的になってそれが分からないのか、
それとも外資だから本当にアメリカ・ドルだけは大丈夫と信じているのか、
それとも危ういことに気づかないからそんな商売を続けていられるだけなのか、
それとも所詮は無知なオバサンの妄想だから相手にしなかっただけなのか……。
その後あまり寄り付かなくなったところを見ると、
やっぱり頭のおかしいオバサンだと思ったのかもしれない。
やっぱり頭のおかしいオバサンだと思ったのかもしれない。