2013年8月11日の補遺 (前)

NYT.「出生時の終末期」と題し、新生児の終末期医療への議論を呼びかける論考。50年まえに未熟児で生まれて「英雄的な」救命治療が行われたにもかかわらず39時間でなくなったケネディ家の赤ちゃん、パトリック君への回想から、終末期医療について率直に議論できるようになってきたのだから、次は新生児への終末期医療についても議論を、と求める新生児医療専門医。真摯なトーンだとは思うけれど、親には「自分がわが子の呼吸器のスイッチを切った」とは言えないのなら医師にやらせればいい、という提案には引っかかる。それを「生きるに値しない生」という表現を疑いなく使える医師が言うことにも。
http://www.nytimes.com/2013/08/05/opinion/end-of-life-at-birth.html

6日の補遺のトップで拾ったYourshawさんの自殺幇助事件で、娘さん擁護から自殺幇助合法化を求める論考。Fatal Marcies というタイトルからも分かるけれど、自殺幇助容認論がいかに慈悲殺容認と隣接しているかを考えさせられる。
http://www.nytimes.com/2013/08/11/opinion/sunday/bruni-fatal-mercies.html?pagewanted=all&_r=1&

9日の使える間に臓器提供したいとMS女性がPASを希望(MI州)の話題に、オーストラリアの安楽死反対運動のリーダーから反論。EPCのSchadenberg経由。ベルギーの安楽死後臓器提供を連想しつつ、「愛他的自殺幇助」の論理とサヴレスキュらの「臓器提供安楽死」提案の論理の共通性を指摘。
http://alexschadenberg.blogspot.jp/2013/08/altruistic-assisted-suicide-surely-you.html

日本。10代少女の心臓、同年代の少年へ 移植手術成功 東大 :こういうニュースはだんだんと扱いが小さくなってゆく。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130810-00000024-asahi-soci

あまりに残虐な児童虐待ケースに厳罰化を求める声が上がっている英国で、オックスフォード大の生命倫理学者Rebecca Roacheが人間の看守のような情がはさまれないロボット看守を提言。さらに同じ年数でも長く苦痛に感じられるよう刑務所の生活をより単調にするだけでなく、囚人の脳をコンピューターと繋いで操作することにより時間経過がゆっくりに感じられるようにしよう、とまで。:こんなの単なるサディズムでは?
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10636#comments

テキサスで、ありふれた交通違反で車を止めさせられた女性ドライバーや同乗者が、道端で手袋をした女性警官に性器に何も隠していないことをチェックされた、と訴え。憲法違反の行為なのにテキサス州の警察にはそうした不文律があり、慣行化しているとか。:かんがえられない。なんという恐ろしい……。テキサス、いろんな意味で怖い。
http://www.nydailynews.com/news/national/troopers-texas-probe-genitals-women-traffic-stops-article-1.1414668

米国野球界のドーピング問題で、THニスチックな生命倫理学者(Ashley療法のパワフルな提唱・推進者でもあります)のNorman Fostが黙っているわけがないと思っていたら、やっぱり「ステロイド魔女狩りもええかげんにせえよ」とでもいったトーンの発言をしている。
http://www.nydailynews.com/opinion/calm-anti-roid-rage-article-1.1422961



THニストと製薬会社は「フローフシ」の夢に向かって人々と炊きつけ続けるけど、大半のアメリカ人は120歳まで生きたいなんて思っちゃいない、という調査結果。2009年に英国人の調査でも、こんなのがあった ⇒ 「やれ何が癌の原因だ、やれ予防にはどうしろ、こうしろって、ウザい」と英国人(2009/5/26)
http://www.medicalnewstoday.com/articles/264487.php


日本。バルサルタン臨床実験不正問題 国は臨床試験の不正の実態を解明できるのか?(「精神科医の犯罪を問う」ブログ 8月10日) 検討会のメンバーにノ社と関係の深い日系BPの関係者が入っている。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/54199751.html?vitality

BMJにHPVワクチンで卵巣機能が損なわれた事例が報告されたみたい。
http://www.naturalnews.com/041512_Gardasil_ovary_destruction_HPV_vaccine.html

HPVワクチン論文の利益相反のエントリーで紹介したシンポで、薬害オンブズパーソン会議の隅本邦彦さんの講演でのプレゼンがこれだったと思う。
http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/sympo/sympo201307kumamoto.pdf

GSK社の「企業における子宮頸がん対策について」というページを覗いてみて「????」と思ったのだけれど、右手のところに「子宮頸がんの症状」というコラムがあって、そこに「【がんになる前や初期の子宮頸がん】・ほとんどの場合無症状」と書かれている。でも「がんになる前の子宮頸がん」って、それは「子宮頸がんではない」でしょう。そこらへんに、HPV感染でしかないものを子宮頸がんと敢えて混同して売り出しているキャンペーンの馬脚が表れているような。それは、日本の厚労省でも確か「HPVワクチン」と呼ぶことに決めたはずなのに、なぜか今なお「子宮頸がんワクチン」と称されていることの不思議にもつながっている。
http://glaxosmithkline.co.jp/kigyo/cervical/index.html