2011年3月16日の補遺

仙台在住の作家、佐伯一麦氏がNYTに寄稿。In Japan, No Time Yet for Grief. 日本語で書かれたものの翻訳。作家の手による生々しい被災体験の描写と、最後の辺り、被災者の冷静さについて「北の人たち特有の感情抑制というよりも、想像を絶する災害で感情がマヒし、嘆きや悲しみや怒りを感じられるようになるにはまだ時間がかかる」のだとの洞察が鋭い。佐伯氏の初期の作品を好んで読んだ時期があったけど、電気技師として働いていた氏の作品には家への帰途などに建築現場の鉄骨や電線を見上げるシーンがよく登場していた記憶がある。このエッセイも最後は電気技師として目にした東京の灯りの記憶で終わっている。中ほどに、People have acquired a desire for technology that surpasses human comprehension. Yet the bill that has come due for that desire is all too dear.
http://www.nytimes.com/2011/03/16/opinion/16saeki.html?nl=todaysheadlines&emc=tha212

最後の防衛線として福島第一原発に残った50人のfaceless, unnamed のオペレーターたちについてNYTの記事。東電は彼らについてほとんど何も語らないが、と。
http://www.nytimes.com/2011/03/16/world/asia/16workers.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha2

ProPublicaから福島第一原発第4号炉に置かれている使用済み燃料棒の問題指摘。NHKでは問題が起こってから出てくるけど、海外メディアでは問題が起こる以前に指摘されていたみたい。
http://www.propublica.org/article/spent-fuel-now-focus-at-japanese-reactor-highlighting-concerns-about-plant

日本の原発の状況についての英語情報リンク一覧をProPublicaがまとめている。:在日外国人が出国していることに対して、心ない発言がネット上に多発しているのを読んで胸が痛んだ。被災を免れた私たちに今できることは、募金と節電と、善意からだけの無思慮な行動を起こしてしまわない自制、それから自分の不安を他者への排斥や攻撃性にすり替えることなく、こんなにも不安になっている自分を素直に認め、自分自身でそれを引き受けることだろう、と思う。そのためには「真の日本人」だ「日本人の誇り」だと力むことも強がることもせず、不安な気持ちを身近な人とそのままに素直に語り合うのがよいという気がする。この大災害や原発事故やこれから私たちの住む社会がどうなっていくのか、多くの人と同じように不安でならない弱い一人の人間として、できる限りの努力を払って節度ある言動を心掛けたい、と思う。本当の強さとは、たぶん、そんなふうに静かなものじゃないのかな。私だって口で言うほど強くはないから、家の中でそれなりにジタバタはしているけど。
http://www.propublica.org/blog/item/following-disaster-news-from-japan-heres-our-reading-list

ずいぶん前に話題になっていた事件なのだけど、インターネットで女性看護師を装ってイギリスの男性とカナダの女性2人に自殺をそそのかし幇助したとして米国人男性William Melchert-Dinkelに有罪判決。
http://www.emirates247.com/news/world/us-man-guilty-of-assisting-in-2-suicides-2011-03-16-1.368916

世界のバイオ製薬企業最大手のQuintilesから刊行された白書の結論として、「これから新薬開発のフロンティアとなるのはアジア。西側諸国の企業はアジア各国の製品の製造を担いたがっているし、アジアの企業は自社製品をグローバル化したがっている。ただし、両者の利益が一致して『この好機から最大の利益を引き出すためには』現在の新薬開発モデルを捨て、複合的な戦略的パートナーシップを可能にする新型モデルによる新薬開発を」。:これを我々の日常言語に翻訳すると、「アジア諸国はまだ欧米のような“科学とテクノの簡単解決バンザイ文化”に毒されておらず、マーケット形成の余地が十分すぎるほどにあり、特に米国のような、絞り尽くされて儲け代がなくなったマーケットに難儀している国の製薬会社の格好の餌食となりうる。アジアの製薬会社の薬にマーケットを広く提供してやる見返りに、彼らの国々に新薬をどんどん作って持ちこみ売らせてもらって、相互にオイシイ商売が可能。」その他、引用には気になる内容が多々あるので、余力があればエントリーにしたい。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/219049.php

ハリウッド映画“Limitless”、スマート・ドラッグを飲んで4日で一冊の本を書きあげ、数時間でどこかの国の言葉をマスターして、弁護士やら犯罪者やら投資アドバイザー巻き込んだ組織の親玉と化す、情報時代のスーパーマンを描いたものらしい。映画の出来があまりにお粗末だという記事。:トランスヒューマニストが書いていることにも感じるけれど、「頭がよい=万能」というのは、ぜんぜん科学的な発想ではない、ただの幻想だよね。
http://www.reuters.com/article/2011/03/16/us-film-limitless-idUSTRE72F1LJ20110316

米国で認知症の人の介護をしている人1500万人。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/219193.php

ダウン症の人が35歳を超えると25%がアルツハイマー認知症の症状を呈することが多くなり、60歳以上では半数以上が認知機能の低下を示すとして、カリフォルニア大学サン・ディエゴ校医学部のダウン症研究治療センター(DSCRT)が、早期治療に結び付けるため、ダウン症候群とアルツハイマー病との関連について調査研究を始めた。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/219103.php

特定の病気に関する遺伝子リスクの検査には未だ質のばらつきがみられるとして、the Genetic Risk Prediction Studies(GRIPS)なる研究報告のチェックリストとガイドラインが出された。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/218947.php

骨形成不全症の6歳男児、革新的な手術で自力歩行が可能に。米。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/219113.php

子どもの時のがん治療で不妊になった男性の3分の2には、手術によって回復の可能性?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/219110.php

南アフリカ赤ちゃんポスト「希望の扉」。しかし、あまりにも寒々しい……。
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-12600166

NHS改革でGPの収入は倍増。しかしGPが会計士みたいになっていいのか? という論議
http://www.guardian.co.uk/society/2011/mar/15/nhs-reforms-gps-double-income?CMP=EMCGT_160311&

WikiLeaksジュリアン・アサンジ氏が、インターネットは言論の自由に資するよりも国家の監視ツールになっている、と。
http://www.guardian.co.uk/media/2011/mar/15/web-spying-machine-julian-assange?CMP=EMCGT_160311&